モラルハラスメントー 愛が生んだ悲劇
「あの・・・ こちらは?」
恐る恐る、もう一人の男性について尋ねる裕子は、自分が緊張しているのがよくわかった。
短くセットされた髪、整えられた端整な顔立ち、綺麗だけれどどこか影のある眼差し。
背が高く、ほどよく日焼けした肌に仕立てのよいスーツがとてもよく似合っていた。
年齢は、30代前半といったところだろうか。 同い年の加奈や裕子より年上なのは確かだろう。
「あ、僕の会社の社長なんです。 カッコイイでしょう?
最近事務所ごと、新宿に越してきたんですよ。」
加奈の彼がやや興奮気味紹介してくれた。
『あ・・・はじめまして、倉澤といいます。』
少し恥ずかしそうに言うと、倉澤と名乗る男が立ち上がり、
自分の前の席へとどうぞと裕子に勧めてくれた。