モラルハラスメントー 愛が生んだ悲劇

二人はやがて、同棲を始めた。

裕子は自分の犬の世話をするために、ペットを飼えない倉澤のマンションと、母親の一人になった部屋を行き来する生活をしていた。

倉澤は、事務所と自分の引っ越しをしたばかりなので、少し落ち着いたら大きなマンションを借りて、裕子と裕子の母親、犬も、みんなで一緒に住もうと提案した。


裕子が自分の貯金も出すと言うのを倉澤は頑なに制止した。


『僕は男だから、好きな女の人にお金を払わせるようなことは絶対に嫌なんだ。』


裕子は、今のうちから犬や母親のことまで考えてくれているということが、心から有り難かった。

お互いの家族や親戚などにも挨拶する機会があったが

特に裕子側の親族から、

『倉澤さんみたいな素敵な人、そうはいないわよ。 絶対手放したら駄目だよ。』

などと言われた。


倉澤は社員達から崇拝され、

裕子の親族中から愛され、

時には裕子の犬の散歩についてきては犬から顔中をベロベロにされて、スーツが泥だらけになったりしても

嫌な顔一つしなかった


裕子には彼の欠点が何一つ見つからなかった。

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