Go against story
数時間がたったとき、タカが急に鉄馬のスピードを緩めた。

「ノゥン!見えたで!あれが海賊“スプリング”や!」

タカが指差す方角にノゥンが目を凝らしたが、水平線に小さな黒っぽい点が見えるだけだった。

「タカ…よく見えるね。僕にはあれが船だってことすらわからないよ。」

そう言ったノゥンに、タカはまた得意気な顔をして

「まぁな!オレの家系は元々ハンターやったらしいから~それでかもしれんな!」

と嬉しそうに言った。そしてアクセルをグッと踏み込むと、

「ノゥン!このままゆっくり隠れながら行くより、堂々と行こか!どうせ船長を見つけな意味ないからな!」

ノゥンはわかったの返事の変わりに、親指を突出して大きく頷いた。





一方、船では見張りの海賊が甲板にいる海賊達へ向かって騒いでいた。

「おっ、おぃ!何か空から飛んで来るぞ!竜じゃねぇ!何か…何か来る!」

海賊達は一斉にどよめき出した。

すると船長が、タバコをジュッと壁に焼きつけると、

「おぃ!お前ら!心配すんな!あれは俺の身内や!やっと、俺の気持ちわかってくれたみたいやな。」

そう言って、嬉しそうに飛んで来る鉄馬を眺めながら、首から下がっている石を指で弾いた。

「コイツがゆうてた一波ってコレのことやったんやな。」






ゆっくりと船に向かっていたノゥン達だったが、タカが異変に気がついた。

「おかしい、この距離やったら攻撃してきてもえぇはずやのに。」

タカがそう言って鉄馬を甲板が見えるところまで走らせると、そこには整列した海賊達がいた。

そして一人の男が叫んできた。

「おーぃ!シン!お前やろ!お前以外にそんなもん作れる奴はおらん!やーぁっと俺の気持ち、わかってくれたんやな!そんなとこおらんと降りて来いや!」

ノゥン達は困って顔を見合わせた。

「ノゥン、船長らしき…ってか絶対船長やろ!あれは…。どないしょう、何か勘違いしとうっぽいで。」

ノゥンは少し考えると、

「タカ、とりあえず降りよう。シンが言っていたように船長に直接“石を奪いに来た”って言わなければいけないだろ?ここは相手に従うべきだと思う。」

と、タカに言うとタカも黙って頷き、静かに甲板へと降りて行った。
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