Go against story
「ようこそ!海賊スプリングへ!…んー?お前ら、シンやないな!シンはどないした!?」

降り立ったノゥン達に船長は近付いて来た。

「シンはおらん!オレらはお前の石を奪いに来たんや!」

タカは船長をにらみながら言った。

「石?…あぁ、“クライ”のことか?そいつぁー無理やな。これは船長の“証”や!くれとゆわれてあげれるもんやない!」

船長はタカをにらみ返しながら、後ろにいたノゥンに気が付いた。

「ん?お前…トランスやんか!やったら別に俺らのクライを盗らんでも、コイツから出せばえぇ。」

ノゥン達はびっくりした。タカがさらに船長に詰め寄る。

「どういう意味や!ノゥンからその…クライってゆうのが取れるって!」

船長はタカの手を振り払うと静かに喋り始めた。

「シンから聞いてないんか?トランスは普通の人と魔族の間に生まれた亜人種や。人外の魔力を持って生まれてくる。そのトランスが死ぬときに魔力だけが強すぎて塊になる。それを“デッドクライ”死者の涙とゆわれる魔力を放つ石になんねん。」

ノゥンは耳を疑った。

(自分が…トランス?しかもあの石は僕の…トランスの魂?)

呆然とするノゥンにタカは、困惑しながらも船長に言い返した。

「そんなん…出来る訳ないやろ!ノゥンはオレの大切な仲間や!オレらはお前の石を奪いに来ただけや!ただ…それだけや。」

銃を構えるタカに、海賊達も殺気をみなぎらせる。

しかし、船長はさらに話を続けた。

「まぁー、見た目からはトランスとはちょっとちゃうからな。まだ分からんけど、クライが共鳴しとう。俺もこんなに人間に近いトランスは初めて見たわ。」

タカを無視しながらノゥンへと歩いて行く船長に、タカは空に向けて空砲を撃った。

「それ以上、ノゥンに近付くな!勝負ならオレとせえゃ!」

ノゥンは銃声にはっと我にかえり、タカに叫んだ。

「タカ!だめだ!むやみに銃を撃っちゃ!」

その言葉に船長も立ち止まる。

「タカ?ひょっとして、お前があのタカか?おっきなったなぁ!俺が村を出た頃は赤ん坊やったはずやのに…。なるほどな、お前も親の跡継ぎでトランスハンターになったわけか。」

船長は薄ら笑いを浮かべた。
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