Go against story

盗賊

ノゥンが小さい頃、気が付いたときには修道院にいた。

周りは同じような孤児たちだったので、別に何とも思わずに育ってきた。
そのうち、ノゥンの異常に強い魔力と、銀髪に緑色の目という風貌から、人々に一目を置かれる存在になっていったのである。





農夫に教えられた道を行くと、小さな森が広がっていた。

時刻は夕食時。あたりはもう薄暗く、一番星が輝いていた。

ノゥンは左手を伸ばすとギュッと拳を握りしめ、スゥーッと息を吹きながら拳を開くと、

「ボォッ!」

小さな炎が手の中で光った。

その炎であたりを照らしながら進んでいく。

木は昼間と違い黒くひしめきあい、ザワザワとあざ笑うかのようにノゥンを見据えていた。



数十分歩いたとき、一瞬人の声が聞こえた。

(空耳か?)

すると今度は

「ドドーーン!ジュワッ!!」

という轟とともに赤い光がノゥンの右の方で光った。

何事かと思いながらその光の方へと走っていく。
赤い光は一直線に飛んだりクルクル回ったりしている。

その光が何かがわかるところまで来たときに、ノゥンは足を止め、草むらに身を潜めた。

そこには数人の倒れた人と、異形な姿(人間のように見えるが目は金に光り、耳は鋭くとんがっていた)の人と赤い火がついた紐付きのボールのような物を振り回す人間達がいた。

(盗賊だ…!)

目の前を一人の金髪の男が、長い棒(銀色で2メートルはあるだろうか?)を持った男のところへ駆けて行った。

「ボス!金目のモノは全部奪いやしたっ!」

ニタニタ笑いながら、ズッシリとしている袋を棒を持った男に手渡す。

「よし、そろそろ引きあげるぞ。」

冷たく言い放つと、側に倒れていた人に

「命は取らないから安心しろ。」

というと、ノゥンの隠れているところへ歩きだした。

ノゥンは迷っていた。

修道院では悪い人も善い人も神の前では全て平等であった。

しかし、目の前のコトを見過ごすのは同時に、自分の無力を証明するのではと考えていたのである。
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