Ｇｏ ａｇａｉｎｓｔ ｓｔｏｒｙ

家の中は盗賊とは思えないような暖かみのある部屋だった。

ボスがテーブルにつくと、ノアールとバックスも続けて座った。

「今、お料理運ぶからねぇ～！」

女の子はピョンと飛び跳ねるとキッチンらしきところへ入って行った。

バックスはすでに首にナプキンを巻き付け、両手にナイフとフォークを持ち、食べる準備は万全である。

ノアールも待遠しいのかソワソワとしている。

ボスは突っ立っているノゥンを見つめ、少し考えるとバックスに

「バックス、こいつにもメシを食わせてやれ。」
と言った。

一瞬びっくりとした顔をしたバックスだったが、すぐにノゥンの縄をほどいてやり、

「良かったなぁ！お前！メシを食えるなんてよぉ！」

と、豪快に笑いながらノゥンをテーブルにつかせてやった。

「おっまたせぇ～！」

女の子が大きな鍋をテーブルの真ん中に置くと手際よく皿に盛り付けた。
「さぁさ！今日はフミュー様特製！“愛情たっぷり☆ポトフ”なりぃ！」
フミューという名の女の子は、得意気に大きな耳をピクピクさせた。

「“今日も”の間違いなんじゃねぇの？」

バックスはポトフを食べニヤニヤしながらフミューに言った。

ノゥンは自分が捕まっているのを忘れるぐらいの暖かさを感じていた。

胸の前に十字を描き、食べれることに感謝を表してから一口食べて見る。
今まで修道院では味わったことのない、肉や野菜たっぷりのポトフに、ノゥンは思わず夢中になった。

「これも飲め。」

そう言ってボスが差し出したのは、紅く透き通った飲みものだった。

「ありがとうございます、頂きます。」

ノゥンはそれがブドウ酒か何かだと思い、薦められるがままに飲んだ。

すると突然、横で豪快に食べながら喋るバックスの声が遠のいたかと思うと

「バタンッ」

ノゥンは床に倒れてしまった。

意識が薄れる中、最後に聞こえた言葉は

「安心しろ。殺しはしてない。」

という、ボスの冷たい言葉だった。