sakura-君と出逢えて-
「気をつけて帰るんだぞ」
「はい……」
岡田が玄関まで送ってくれてわたし背を向ける。
意外と優しいところはある。
こういう所がもっと目に見えると岡田の人気もあがるのに……なんて思ってしまう。
まぁ、そうなると威厳はなくなるから……やっぱり今の方がいいか。
校門までのキョリ。
アスファルトに落ちた無数の花びらをなるべく踏まないように歩く。
そういえば……今日、ゆずと会う約束してたっけ?
ゆずが落ちてきた桜の木を見つめる。
でも、そこにゆずはいなくて……。
それが分かってホッとしてる自分もいた。
「ゆず……ごめんね……今日の放課後は会えないや……」
そっと木に手を添えてそう呟く。
この言葉。
ゆずに届きますように……。