藤の君へ
「藤殿、荻様の元へ案内してもらえるか」


今だにポカンと口を開けている女房を無視して藤と共に荻の元へ向かう事にした。


「ただいま」


藤は今さっきの子どもじみた顔とは別人の顔になった。

気を引き締めて仕事をする女性の顔に。


…いい表情だ。

目でそれを彼女に訴え女房の隣を通り過ぎた。



< 13 / 31 >

この作品をシェア

pagetop