藤の君へ

◇心うまれる

「義平殿」

内裏の無駄に長い廊下を歩いていたときに突然
後ろから声をかけられた。

「これは、隈惟殿ではありませんか。
お久しぶりにございます。」

出来れば一生のうちにあまり会いたくない相手に会ってしまった。

南の方角が吉と出ていたが外れてしまったようだ。

陰陽師の腕にもよるが今日の陰陽師はいかんともしがたい。



隈惟[クマタダ]の血縁の陰陽師と聞いたからあまり期待はしていなかったが
こうも見事に外してくれては先がないだろう。



やはり陰陽師は安倍家に限る。



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