藤の君へ
「義平殿、いかがなさいましたかな…?」


一人であれこれ考えていると隈惟が声をかけてきた。


(お前の自慢の下等専属陰陽師について考えていた)

などと口が割けても言えるはずはない。


「すみません。この暑さにやられまして…」

今は夏である。

貴船の蛍は見頃を終え、
梅雨も明けてしまった。


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