とある青年の復讐劇
「………俺達は、ただ、いい生活を求めてただけだったのにな」


いい生活。


理想という空虚な幻想に取り憑かれ、今までの生活も、左腕でさえも失ったのだ。


「お気の毒さま」


「ははっ」


大きく、黒目がちな瞳が下を向く。


「……俺の好きだったコも、死んじまったよ。政府のヤツに殺された」


「随分暗い人生送ってるんだな、あんた」


「…そういうお前は?」


「気がついたらここにいた。多分、親はここで俺を産んでここで死んだ…違う、俺が殺した」


へぇ?と面白そうに因幡が首を傾げる。


「で 変な奴に拾われて。変な奴に育てられて。…そいつも、馬鹿げた誰かに殺された」


バーのカウンターに肘をついて、首を傾げた姿勢のままの因幡は

「それで?色んなヤツを殺しまくって頂点に立ったってワケ」


「…大体そんな感じだ」




話は長引いて、結局夜が更けるまで話し込んだ。
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