硝子の靴 ~夜帝の紅い薔薇~少女A~
父親は、
静かに言った。


「日和は、

何故、私達が許嫁を決めたのか、理解はしてるのかい?」


「はい。
理解してます」


「そうか」


父親は、
再び黙って、
頭を下げている日和を見つめる。



「私が、
苦労をしない様に。

お父さんとお母さんは、
私のことを思って決めて下さったこと、
重々わかってます。
感謝も感じてます」


「日和…」


母親が、日和の肩に手を置いた。


父親は、
再び口を開く。


「愛さえあればという言葉があるが、
お金が無いと、
嫌気がやってくる。

嫌気になると、
何でこの人と…と、
相手のことが嫌いになることも。

そうなっては、
夫婦の継続の意味も困難も…」


「はい」


「築き、培ったものの道のりで、夫婦となっていくのだよ。
初めからいきなり夫婦ではない。
築いてゆくんだよ」


「はい」


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