硝子の靴 ~夜帝の紅い薔薇~少女A~

頭を下げたまま
父親の言葉を黙って聞き、返事だけをする日和を、
父親は、
じっと見ていた。



「日和には言ってなかったが、
許嫁のきっかけは、
桐生家からの申し入れだったのだよ。

あれは、
日和が七つの時に
桐生家から電話があったんだ。
小学校で初めて見た日和に、
隼人くんが、
一目惚れをした、と、
桐生さんから電話があったのだよ」


「え…」


「それでね、お父さんたちは話し合って。

桐生家は、代々続く財閥。
隼人くんは、その跡取り。
若いのに冷静で
地に足のついた物腰の彼になら、
そして、
その様な家になら、
日和を任せられる、

それで、決めたのだよ」


「はい」


日和は、

自分の願いが両親に
特に父親に
聞き入れられるのか
不安になった。


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