硝子の靴 ~夜帝の紅い薔薇~少女A~
学校までは、家から徒歩で約15分。

学校へ着き、門をくぐると、いつもと変わらない光景から、少しずつ視線を感じ、小さくざわめきが起こった。

【ん?】

私は、意味がわからずに、校舎へと歩く。

『あ!日和さんよ』

『あっほんとだ!』

『日和さん、眼鏡をされてない』

『綺麗な人ね、日和さんて』

『何改めて言ってるの?日和さんは、綺麗な人よ』

『だって、凄く綺麗な人なんだもの』

『ほんとね。眼鏡が隠していたとはいえ、あんなに綺麗だったとは、知らなかったー』

『私もです。眼鏡されてる時も、綺麗な人だなぁって思ってましたけど』

『日和さん、目、悪くなかったってこと?』

『コンタクトになさったのかしら』

『さぁ』

『気になりますねぇ』

『えぇ。でも、話かけることなんてできませんわー』


口々に言っているのを聞いて、理解した。

こちらに聞こえているので、私は、笑いそうになる。


「おはよう」

「おはよう。あ、この間は、ごめん」

「ほんとだよー。急に来れないとか言うんだもん」

「ごめん。あれから、どうした?」

「一人、本を読んで帰ったよ」

「そっか。せっかくの日曜日、つまらなくさせたね。穴埋めするから」

「当然」

「ごめんってば」

「うそうそ冗談。一人で読んでたらさ、桐生君が声をかけてきたのよ。だから、ちょっとしゃべったよ。しゃべると意外に楽しかったよ、あの人」

「そう」

「あ、日和、嫌いなのよね」

「………」

「でも、そんなに悪くないと思うけどなぁ。頭痛くなりそうな難しそうな本を読んでたよ」

「あぁ。いつもそういう本を読んでるよね」

「へぇ。あ!そうだ」

「ん?」

「『今日は花瀬さんと一緒じゃないの?』って聞かれたの。『約束してたんだけど、日和に急用ができたみたいで』って言ったら、『急用?』って聞くから、『聞いてないから、何かは知らないけど』って言ったら、桐生君、凄く気になる様子だったよ」

「えー?気になる?何が?」

「何が?って、日和のことが、じゃない?」

「何で」

「彼は好きなのよ、日和のこと」

「やめてよー、ないない」

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