硝子の靴 ~夜帝の紅い薔薇~少女A~
「日和ちゃん、今日は、何時まで大丈夫?」

左ハンドルを運転しながら、前を見据えたまま、彼は私に尋ねた。

「六時までです」

私は、彼の真後ろから答える。
私の門限時間。

「じゃあ、五時に家に送るからね」

「あ、はい」

彼は、門限時間の一時間前を言った。

彼は、どんな人なのだろうか。

私は、まだ知らないながらも、不思議だった。


車の中で、音楽がかかっていた。

聴き覚えのある歌。

でも、名前が思い出せず、私は、車窓から見える、流れる景色を見ながら、思い出そうとした。

その音楽を聴きながら。

その歌は、とてもテンポの早い歌だった。

男の人の、歌声。

歌詞が日本語で、邦楽の様。

テンポの早い歌だというのに、とても悲しい歌だった。

【あ、…】

サビを聴いて、わかった。

【X、の歌だ】


流れる景色と重なって、車内に、哀愁を響かせていた。

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