硝子の靴 ~夜帝の紅い薔薇~少女A~
車窓から、ぼんやりと風景を眺めていると、見覚えのある景色が、見えてきた。

【あれ?】

それは、待ち合わせをした緑道の近くの、私もよく知っている中心街だった。

長い時間、車を走らせていたので、何処か遠くに行くのだろうと、私は、思っていた。

なのに、見えてきたのは、さっきの場所の近くだったので、私は、意味がわからずに、不思議に思っていた。

車は其処から、高層ビルの建ち並ぶ道へと入り、そして、とあるビルの地下へと入った。

景色が暗くなる。

この入口が、何処へ繋がるのか、私は、知らなかった。

私は、明暗の変化と、何処に着くのか、まだ見ぬ知らぬ場所に、緊張した。

表情は、変えないままに。

【あ…】

車が、何台も停まっているのが見えて、地下の駐車場だということを知る。

初めて知った、ことだった。

車は、その一角に入り、そして、停まった。
エンジンが消え、音楽も止み、辺りが静まり返る。

あまりの音のなさに、私は、緊張して、目を落とし、口をつぐむ。
私は、自分の覚悟が、揺るがない様に努めた。

七海 龍星も黙ったままでいるのに気づき、私は、徐に視線を上げた。
後ろの座席から、運転席にいる彼の後ろ姿を見る。

彼は、黙ったままだった。

【これから、どうするのだろう……】

私は、彼の言葉を待っていた。

静まり返る空間が、私の鼓動を速める。

彼は、言葉を発しない。

【何で、黙ってるの…私は、どうしたらいい…】

私は、彼の言葉を待つしかできなくて。
ただ、彼の後ろ姿を見つめる。

後ろ姿でよく見えないが、彼は、ドアに肘をつき、なんだか、少しうつ向き加減で、一点を見据えている様に見えた。

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