硝子の靴 ~夜帝の紅い薔薇~少女A~
駐車場は、人の気配はなく、音ひとつなくて、静かだった。

私達のドアを開ける音と靴音だけがする。

ドアを閉めると、駐車場内に音が響き渡った。

「ドライブは好き?」

鍵を閉めながら、彼が尋ねた。

「はい、好きです」

私は、何故、突然ドライブの話なのかと、彼を伺い見る。

「そっか。俺がドライブ好きだから勝手に走らせてたけど、退屈させてたなら悪かったなと思って」

【あぁ!ドライブしてたんだぁ】

私は、謎が解けた。

「ドライブ、とっても好きです。楽しかったです」

私は、心のまま、笑顔になった。

「そっか。良かった」

彼は、私を見て微笑んだ。
そして、私を見つめた。

【ん?】

私は、笑顔のまま、疑問に思う。

彼は、ハッとした様な表情になり、私から目をそらした。

【?…じっと見つめて、なんだろう】

「よし。じゃあ、本題に入るね」

「あっはい」

私は、すぐに疑問を忘れて、頭を切り替えて、彼の話を聞く姿勢になった。

「このビルは、俺のビル」

「七海さんの!?」

目を丸くする私に、彼は、淡々と言った。

「そう。で、今から、俺の店を見せるね。行こう、おいで」

「あ、はい」

彼は、歩き出した。

私は、目を丸くしながらも、自分らしく冷静に努め、彼についていく。

エレベーターの前に行き、彼はボタンを押した。

上のボタンを見上げると、点灯が、数字を下っていた。

数字は、B1~10まであった。

【こんなに…】

私の驚きをよそに、エレベーターの扉は、静かに速やかに開いた。

私は、彼に連れて、エレベーターに乗る。

扉が閉まると、彼は、10のボタンを押した。

【最上階…】

私は、心の中で呟く。

どんな場所なのだろうか。

外の景色は見えるだろうか。

最上階からの見晴らしは、どんなだろう。


私は、未だ知らぬ未知の場所に、未知の時間に、胸が高鳴るのだった。

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