硝子の靴 ~夜帝の紅い薔薇~少女A~
突然、女性の笑い声が耳に飛び込んできた。

私は、驚いて硬直する。

「おう!百合恵」

彼は、声をかけた。

私は、そっと目を移す。
派手な服装の女性が二人、エレベーターから降りて来た。

そのうちの一人が、彼に話かけた。

「左曲がりって、何の話してんのよ。可愛い子がびっくりするじゃない、ねぇ」

そう言って、私を見た。

「綺麗な子ー。高校生?」

「え?あ、いいえ、」

私が喋るのを、彼は割り込んだ。

「日和ちゃん、俺の妹」

「日和ちゃんていうの。私、百合恵。宜しくね」

私は、会釈をした。

「可愛いー」

もう一人の女性もこちらを見ていたので、その人に目をやると、無表情でじっと私を見ていた。
私は、なんだか怖かった。

「でもどうして、今日は女の子連れなの?珍しいじゃない。何処で捕まえたの?」

妹が、彼に尋ねている。

「はいはい、店に入った入った。やることあるから早く来たんでしょ」

彼は、ジャスチャーをして追い払っている。

「ねぇねぇ」

「霞ちゃん、今日は早いね」

妹の言葉を無視して、彼は、もう一人の女性に声をかけた。

「はい。おはようございます」

女性は、とびきりの笑顔をした。

「今日も宜しくね」

「はい」

女性は、嬉しそうにはにかんだ。

「もう、無視だよ。霞ちゃん、行こう。日和ちゃん、またねー」

私は、彼の妹に会釈をした。

二人は、お店の中へと入っていった。

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