硝子の靴 ~夜帝の紅い薔薇~少女A~
男性が数人、エレベーターから降りてきた。

「お疲れ様です」

彼を見て、直ぐに挨拶をしたので、ここの従業員だと知る。

「どうした。もう出勤か?」

「はい。したいゲームを置いてるんで」

男性達は、苦笑いする。

「そうか」

それを聞いて、彼も、笑っていた。

返事をすると、男性達は、物腰低く会釈をした。

「あれ、珍しいですね!そんな格好。てゆうか、初めて見ました」

皆、慎ましい物腰の中、一人だけ、馴れ馴れしい態度で、彼に接する者がいた。

彼は、言葉はなく、その人を見据えている。

他の者達は、各々、速やかに、店や休憩室に行っていた。

「あ!」

馴れ馴れしいその男性は、私をじっと見た。

そして、怪しい笑みを浮かべた。

「社長、新しい子の面接ですか?」

他の従業員が、馴れ馴れしいその男性を見る。

「決まったんですか?」

「いや」

さっきまで、口を開かなかった彼が、答えた。

「じゃあ、俺に面接させて下さいよ」

「いい加減にしろ」

私が来た時に、エレベーターのボタンを押していた黒髪の男性が、やってきた。

「社長、俺、見る目あるんですよ。彼女の年齢、特徴、本人も知らない才能にあった彼女に適正の仕事、見つけてあげますよ」

「お前、社長にどういう口効いて、」

彼が、片手で制止の仕草をしたので、黒髪の男性は黙った。

「年齢、特徴、本人も知らない才能?」

「はい」

「わかるのか」

「はい」

馴れ馴れしいその男性は、横柄な態度で返事をする。

彼は、馴れ馴れしいその男性を見据える。

何秒かの沈黙のあと、彼は、見据えたまま、静かに口を開いた。

「なら、お前に仕事を与えるぞ」

私は、その迫力に圧倒される。

「この会社の使命は、知ってるな」

「はい…使えない人間は、いらない…あ、やっぱり」

「何?」

彼の目が鋭くなった。

男性達が、馴れ馴れしいその男性を見据えている。

「お前に、仕事を与えるぞ」

「はい」

「事務所を使え」

馴れ馴れしいその男性は、さっきまでの横柄な態度とは打って変わって、速やかに、私を事務所へ案内した。

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