硝子の靴 ~夜帝の紅い薔薇~少女A~
「へ?」

馴れ馴れしい男は、目を丸くした。

私は、薄手の上着を脱いだ。
そして、ノースリーブのワンピースの胸元のボタンを外した。

「おい、ちょっと、ここで?マジで?」

「面接なんでしょ?」

私は、淡々とボタンを外していた。

「あぁ。…じゃあ、俺がテストしよう。俺が面接官だからな。合格か不合格か」

馴れ馴れしい男は、私の傍にきた。

「はい、そこまで」

七海 龍星の声がした。

「あぁもう、風をひいたらどうする」

彼は、そう言いながら、私に近寄ってきて、そして、私を抱きしめた。

「え?」

「社長が、女を抱きしめたぜ」

「社長の女なの?あの子」

「さぁ」

各々、小声で言っていたが全部聞こえた。

私は、抱きしめられたまま、徐に、周りを見る。

従業員の男性達が、呆然とこちらを見ていた。

彼は、私を抱きしめたまま、片手を伸ばした。

目で負うと、黒髪の男性の方に、差し出されていた。

黒髪の男性は、手に持っている上着を、差し出された手に渡した。

彼は、それを受けとると、そっと私に着せた。


「間違えは、いくつもある」

彼の目が、鋭くなった。

「へ?」

馴れ馴れしい男は、目を丸くした。

「お前…」

彼は、振り返り、馴れ馴れしい男を見据えた。

「何歳だと?」

「へ?こ、高校生、じゃないんすか?」

「この子は、12歳だ」

黒髪の男性の目が、一瞬、ぱちくりした。

はっきりとわかる程に。

「は?へ?」

馴れ馴れしい男は、震えた。

「お疲れさん」

彼は、馴れ馴れしい男の肩を押さえた。

「しゃ、社長、もう一回チャンスを、」

馴れ馴れしい男は、土下座で訴えた。

「お前、もう、この街で、生きていけねぇなー」

「しゃ社長…」

「また二言を言うつもりかー?容赦せんぞ」

彼は、低い声で言った。

馴れ馴れしい男は、黙った。

「出口は、あっちだ」

従業員の男性達が、避ける。

馴れ馴れしい男は、彼に一礼し、立ち上がると、その場から去っていった。

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