硝子の靴 ~夜帝の紅い薔薇~少女A~
「日和に、お花が届いたわよ」

母が、声高らかに玄関から戻ってきた。

真っ赤な薔薇の花束を抱えて。

あまりの薔薇の多さに、母は、両手でしっかりと抱えていた。

「まぁ、綺麗!」

「あらー、凄いわねぇ」

どよめきが起き、周りで見ている人達が、感嘆の声をあげた。

「ここに置くわね」

母は、私にそう言うと、薔薇の花束を、大きな出窓に飾った。

一目見て、何本あるのかわからないほどの薔薇の花が、木造の籠の中に入っていて、真っ赤に鮮やかに咲いていた。

「見事な紅色ねぇ」

「うん」

「日和に、薔薇のプレゼントが届いたなんて、お母さん、びっくりしたわぁ。女性が薔薇を貰うのは、素敵なことよ」

母は、私の肩にそっと手を置いて、微笑んだ。

「はい。…誰から?」

「あ、えーっと。誰からだったかしら」

「えぇ、?」

「あら。本当に忘れちゃった。そのうち思い出すわ。お花に、お水を注いであげましょうね」

母は、お茶目に笑うと、お水を汲みに行った。


ふと、薔薇の花びらの間に、メッセージカードがあるのを見つけた。

私は、それをそっと手に取る。

見ると、
『From,七海 龍星』と書いてあった。

「七海さんが…」

手紙には、言葉が書かれてあって、私は、それを読んだ。

『To,日和

合格 おめでとう

君に 何を贈ろうかと考えた

歳の数だけ 薔薇を贈ろうと思いつき

でも 15本では物足りなくて
150本にした

慣れないことで 恥ずかしいが

喜んでくれたら
嬉しい

美しい君へ

From,七海 龍星』

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