硝子の靴 ~夜帝の紅い薔薇~少女A~
「そうだな。彼女達は、性格いい子だし」

「そうなんだ」

「うん。そういえば、彼女達、日和の何のお祝いだろうとか、思わなかったのかねぇ。ホント、自分達が楽しみたくて来たんだな」

彼と私は、顔を見合わせて微笑んだ。

「それにしても、騒いだなぁ。掃除が大変だ。コイツ等にきっちりさせよう」

彼は、我が子を見るかの様な目で眺めていた。

音楽は、軽快な曲調から穏やかな曲調になった。


「あれ?何してるの?」

店の扉が開いて、又、女性が入ってきた。
今度は、三人。

入ってきた女性は、彼へと歩み寄り、彼に尋ねた。

「あっ」

前に、一度会った、彼の妹の百合恵さんだった。

「おう」

彼は、妹に目をやる。

一緒に来た二人の女性も、こちらへ来た。

見ると、一人は知らない女性だったが、もう一人は、前に初めて百合恵さんと会ったときに、百合恵さんと一緒にいた人だった。

【確か、霞ちゃんって】

彼に言葉をかけられて、はにかんだのが印象的だったのを思い出す。

「どうした?」

彼が、妹に尋ねる。

「買い物してたの。たまたま前を通って、休みなのに電気が付いてるのが見えたから。何してるの?」

「あぁ。今日は、日和のお祝いなんだ」

「日和ちゃんのお祝い?何の?」

妹は、微笑んで私を見た。

私は、微笑んで会釈をする。

「日和が、高校に合格したから、そのお祝いだ」

「そうなんだ。おめでとう。ってゆうか、えー!日和ちゃん、中学生だったの!?」

妹は、目を丸くした。

私は、苦笑いをしながら、お礼を言った。

「駄目だよ!兄ちゃん!犯罪だよ!たまげた」

妹は、彼を見ながら、唖然とした。

「たまげた、って、お前はオッサンか」

彼は、何食わぬ顔をしていた。

「でも、日和ちゃん、大人っぽいねぇ。初めて見たとき、綺麗な子だなって驚いたのよ。へぇ…、言われてみれば、そうなのかもと思うけど。まだ、おぼこい感じ?肌が綺麗だよね。ねぇ」

そう言って、百合恵さんは、霞に言う。

「…うん」

彼女は頷いたが、無表情で、私とじっと見ていた。

前も、この表情が怖かったのを思い出す。

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