硝子の靴 ～夜帝の紅い薔薇～少女Ａ～
「瑠未さん、話にかたってよー」

百合恵さんが、お茶目に笑いながら、もう一人の女性に声をかけた。

彼女は、細身で背が高く、一際目立つ女性だった。
クールアシメの髪型を金髪にして、長めの前髪の一部など数箇所を、銀色のメッシュを細く入れていて、色白の肌に、とても似合っていた。

百合恵さんが、着物姿で一際目を引く女性とすれば、彼女は、深いスリットの入ったチャイナドレス姿で一際目を引く様な、格好いい女性だった。

立ち姿も格好いい彼女は、会話をする私達から数歩離れた所に立って、どこかを見据えていた。

私は、彼女が、何か向こうの方を見ていることに気付き、なんとなく、彼女の視線を辿った。

すると、黒髪の男性が、一角のバーカウンターで、グラスを磨いていた。
私が初めてここへ来た日に、エレベーターのボタンを押していた、七海 龍星が気が利くと褒めていた、あの彼。

【好きなのかなぁ】

私は、真っ直ぐに見据えている彼女を見ながら、そんなことを思っていた。

「瑠未さーん」

「え？あ、何？」

百合恵さんの声かけに、彼女は、ハッとした様子で返事をした。

「この子、日和ちゃん。高校に合格したから、今日は、この子のためのお祝いパーティーをしてるんだって。今、その話をしてたの！」

「そう。おめでとう」

彼女は、百合恵さんの話を聞くと、私を見ながら微笑んでそう言った。

私は、お礼の言葉を言いながら、丁寧にお辞儀をした。

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