硝子の靴 ~夜帝の紅い薔薇~少女A~
彼が言ったとおりに行き、お手洗いを見つけた。
左側は格子で、真っ暗の中にブルーに浮かぶお洒落な洗面台があり、右側に二つの扉があった。
扉には、格好良い絵が描かれていて、手前の扉は男性の絵、奥の扉は女性の絵だった。
私は、扉を出て手を洗うと、ホッとして歩きだした。
「ねぇ涼。
日和って子、龍星さんの何?」
ふと耳に入ってきた自分の名前に、私は、足を止めた。
女性の、とても冷たい声だった。
声のした方に目をやると、椅子に座る瑠未という女性の後ろ姿と、カウンター越しに瑠未の前に立っている黒髪の男性の姿が見えた。
「龍星さんて、
女いないんでしょ?」
「さぁ」
「龍星さんに惚れて、
言い寄る女は沢山いる。
腐るほど。
でも、どの女も自分の女にしない。
来るもの拒まず。
だけど、
結局、抱かない。
女は、勝手に解釈する。
抱かないのは、
愛しているからだ、と。
罪な男ねぇ…」
「そうか?」
「そうよ。
言い寄る女の中に、
愛してる女がいるのかと思ってた。
あの子を見るまでは。
だから、前までは、
誰が一番なのか、
ランキングを付けてたの。
私の楽しみのひとつ」
「変な楽しみだな」
「私は、涼…
貴方が好きだから、
龍星さんに言い寄る
女のバトルは、
楽しい観戦なの」
「へぇ」
「ねぇ、
龍星さんはどうして、
あの子を、いつも傍に
置いてるの?」
「そうか?」
「私、見たの」
「何を」
「龍星さんが、
デートしてるところ」
「女とデートくらい
するだろ」
「何処にいたと思う?」
「さぁ」
「ハンバーガーショップ」
「は?」
「でしょ。
龍星さんが、
ああいう店に居ただけでもびっくりしたというのに、女の子と一緒で。
凄く笑ってた。子どもみたいに」
「へぇ」
「あの子といる
龍星さんを見て、思ったわ。
言い寄る女。
好きじゃないから、
抱かなかったのよ。
自分の女しか
助手席に乗せないと決めてる人よ。簡単明瞭な事だったのよ。
ねぇ、
あの子、何者?」
「さぁ」
「女は乗せて貰えない
龍星さんの車に、
あの子、乗ってたのよ」
左側は格子で、真っ暗の中にブルーに浮かぶお洒落な洗面台があり、右側に二つの扉があった。
扉には、格好良い絵が描かれていて、手前の扉は男性の絵、奥の扉は女性の絵だった。
私は、扉を出て手を洗うと、ホッとして歩きだした。
「ねぇ涼。
日和って子、龍星さんの何?」
ふと耳に入ってきた自分の名前に、私は、足を止めた。
女性の、とても冷たい声だった。
声のした方に目をやると、椅子に座る瑠未という女性の後ろ姿と、カウンター越しに瑠未の前に立っている黒髪の男性の姿が見えた。
「龍星さんて、
女いないんでしょ?」
「さぁ」
「龍星さんに惚れて、
言い寄る女は沢山いる。
腐るほど。
でも、どの女も自分の女にしない。
来るもの拒まず。
だけど、
結局、抱かない。
女は、勝手に解釈する。
抱かないのは、
愛しているからだ、と。
罪な男ねぇ…」
「そうか?」
「そうよ。
言い寄る女の中に、
愛してる女がいるのかと思ってた。
あの子を見るまでは。
だから、前までは、
誰が一番なのか、
ランキングを付けてたの。
私の楽しみのひとつ」
「変な楽しみだな」
「私は、涼…
貴方が好きだから、
龍星さんに言い寄る
女のバトルは、
楽しい観戦なの」
「へぇ」
「ねぇ、
龍星さんはどうして、
あの子を、いつも傍に
置いてるの?」
「そうか?」
「私、見たの」
「何を」
「龍星さんが、
デートしてるところ」
「女とデートくらい
するだろ」
「何処にいたと思う?」
「さぁ」
「ハンバーガーショップ」
「は?」
「でしょ。
龍星さんが、
ああいう店に居ただけでもびっくりしたというのに、女の子と一緒で。
凄く笑ってた。子どもみたいに」
「へぇ」
「あの子といる
龍星さんを見て、思ったわ。
言い寄る女。
好きじゃないから、
抱かなかったのよ。
自分の女しか
助手席に乗せないと決めてる人よ。簡単明瞭な事だったのよ。
ねぇ、
あの子、何者?」
「さぁ」
「女は乗せて貰えない
龍星さんの車に、
あの子、乗ってたのよ」