硝子の靴 ~夜帝の紅い薔薇~少女A~
出会い
桜が満開の中、中学校の入学式は、滞りなく済んで、母は、上機嫌に、他の父兄達と言葉を交していた。
勿論、桐生家とも。
私は、桐生隼斗と関わりたくなくて、だからと言って、目の前にいて避けるのも角がたち怒らせても嫌なので、そっと離れていた。
そして、一人、桜の咲く木を見上げる。
そよ風が、心地良く吹く。
私は、桜の木を見上げていると、なんとなく悲しい気持ちになった。
卒業式ではなく入学式だというのに、桜の木を見上げ、悲しくなった。
「あ、…」
桜を見上げる私の頬に、一筋、スッと涙が伝ったのがわかった。
【いけない、どうしたのかしら私…】
私は、誰にも気づかれまいと、何気なく右手で涙を消した。
『泣かないで』
【え…】
傍で、男の人の声がした。
その声は、少し前にも聞き覚えがあった。
私が、夜中に、部屋で一人で受験勉強をしている時。
その時は、『お疲れ様』だった。
とても優しい声。
『泣かないで…』
再び、聞こえた。
【今日は、二回も聞こえたなんて…一体、誰?】
私は、頬の涙の後を拭って、泣いたと誰にも気づかれないはずだと意識しながら、一呼吸をして、そっと周りを見渡した。
周りでは、父兄達も生徒達も各々に会話をしたり、各々に散らばっている。
私の傍にきて、声をかけた人の気配はない。
【誰よ………何なのよ…】
一瞬、強い風が吹き、桜の花びらが舞った。
私は、強い風に目を瞑る。
『泣かないで、麗花さん』
【え…麗花さん?】
風は、一瞬で止み、私は、目を開けた。
目の前に、知らない男子が、私を見つめて立っていた。
勿論、桐生家とも。
私は、桐生隼斗と関わりたくなくて、だからと言って、目の前にいて避けるのも角がたち怒らせても嫌なので、そっと離れていた。
そして、一人、桜の咲く木を見上げる。
そよ風が、心地良く吹く。
私は、桜の木を見上げていると、なんとなく悲しい気持ちになった。
卒業式ではなく入学式だというのに、桜の木を見上げ、悲しくなった。
「あ、…」
桜を見上げる私の頬に、一筋、スッと涙が伝ったのがわかった。
【いけない、どうしたのかしら私…】
私は、誰にも気づかれまいと、何気なく右手で涙を消した。
『泣かないで』
【え…】
傍で、男の人の声がした。
その声は、少し前にも聞き覚えがあった。
私が、夜中に、部屋で一人で受験勉強をしている時。
その時は、『お疲れ様』だった。
とても優しい声。
『泣かないで…』
再び、聞こえた。
【今日は、二回も聞こえたなんて…一体、誰?】
私は、頬の涙の後を拭って、泣いたと誰にも気づかれないはずだと意識しながら、一呼吸をして、そっと周りを見渡した。
周りでは、父兄達も生徒達も各々に会話をしたり、各々に散らばっている。
私の傍にきて、声をかけた人の気配はない。
【誰よ………何なのよ…】
一瞬、強い風が吹き、桜の花びらが舞った。
私は、強い風に目を瞑る。
『泣かないで、麗花さん』
【え…麗花さん?】
風は、一瞬で止み、私は、目を開けた。
目の前に、知らない男子が、私を見つめて立っていた。