硝子の靴 ~夜帝の紅い薔薇~少女A~
「夏休みに福岡かぁ。
そっかぁ」
「うん」
「福岡では、
何してるの?」
「うーん、いろいろ。
…蛍見に行ったり」
「あぁ、蛍かぁ」
「七海さん、
蛍見てる?」
「あぁ~、全然見てないなぁ」
「だよねぇ、毎日
東京のど真ん中にいるものね。
蛍、綺麗だよ」
「だろうね」
「うん。とっても」
「癒されるだろうな」
「うん」
「何処で見るの?川辺?」
「うん」
「家の近くにあるの?」
「うん、ある。
家から少し歩いた所に、
釈詩川っていう川があるの。
水が澄んでいて、
とっても綺麗な川」
「綺麗な水の所にいるんだよね」
「うん」
「そっかぁ」
龍星は、
自分の知らない福岡での日和の夏休みを
そっと静かに空想した …