「さよなら」も言わずに。
私の横を通り過ぎて、

坂木先輩は浩介の居る教室へと向かった。

…はずだったんだけど。

私の肩に手を置いている先輩。

「え…!?」

すごく顔が真っ赤になってきて、

火照った顔の隠し場所に困ってた。

「先輩?」

えっ?って顔してるのに、先輩は

ずっと無口なまま。

でも、いつもと違ってた。

手で合図してるから。

両手で四角を作って

ペンを持ったような手で“書くもの”って

表している。

とっさにそれを感知して、

メモ帳とペンを取り出して先輩に渡した。

スラスラとペンでメモ帳に文字を書いていく。

『一緒に帰んぞ!!!』

メモ帳に書いた、先輩の癖字。

「うん!」

笑顔で返事をすると、先輩は私の手を掴み

スタスタ歩いて行った。
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