「さよなら」も言わずに。
この時はまだ、気にならなかった。

先輩がどうして、口で喋らないのかを。

風邪ひいて、声が出ないのかな?

それくらいにしか思っていなかったんだ。

『浩介と付き合ってんの?』

愛と同じようなことを聞かれ、

焦る気持ちを抑えて先輩に笑顔で答えた。

「全然!浩介は、友達ですよ。」

『そっか。』

その返事が何だか嬉しかった。

愛みたいに、疑わない先輩が何だか

すごく嬉しかったんだ。

「じゃ、先輩は彼女居るんですか???」

居て当然。

だって、すごくカッコイイんだもん。

でも「居る」って言われたところで

多分私は、ショックを受けるだろう…。
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