「さよなら」も言わずに。
家までの道のりを、

1回も止まること無く走り続けた。

走ってる最中だけ、忘れられた。

今日、学校であった出来事が。

何もかもが、洗い流されたかのように

綺麗に忘れられたんだ。

すごくスッキリする思い。

だけど…

だけど、そんなのすぐ無くなっちゃうんだ。

家につく少し前、小さな石につまずいて転びそうになる。

石にまでもバカにされてるみたいに思えて

涙が瞳を潤わせた。

-ガチャ-

家の玄関を開けた時、

「おかりなさい。」

とお母さんの声が聞こえた。

「ただいま」も言わずに、2階の自分の部屋へと

駆け上がる。

-バタン-

とドアを開け、

-バタン-

とドアを閉めた。

ドアを閉めた時の音が聞こえた瞬間

涙が溢れた。

独りぼっちで泣いてる、今の私。

自分自身が、すごく惨めに思えた。
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