「さよなら」も言わずに。
『なんでもないよ。
ごめんね、心配かけちゃって』

本当は、なんでもなくないのに…。

尚人を心配させたくなかった。

『俺の前で自分偽るな。
全てさらけ出せ。俺、ちゃんと守るから』

この言葉に、どれだけ安心出来ただろう…。

この言葉に、どれだけ勇気付けられただろう…。

『ん…。』

なのに私は弱いままで、尚人に返す言葉が

見つからなかった。

『今は言えないだろうから、
言えるようになってからでいいよ。
俺、それまで待つから。』

尚人…、どこまで優しいんだろうか。

すごく温かい気持ちになった。

『ありがと。。』

『バァカ!泣くまで我慢すんなよ。
つか、浩介に相談しんかったん?』

浩介…。

変なデマを流されて、

私と口をきいてくれなくなった。

すごい仲良かったのに…。

家族みたいな存在だったのに、あんなデマで壊れてしまった。

思い返すと、止まっていた涙が

また溢れた。
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