「さよなら」も言わずに。
普通にテレビを見る。

でもね?何だか違うの…。

隣に尚人が居る。

尚人の肩・腕・足が私の肌に触れている。

静かな部屋の中に、2人きり。

聞こえるのは、テレビの中のタレントの声だけ。

「…尚人。」

小さく呟いて、尚人の手をギュッて握った。

大きな手。

すごく温かい手。

ギュッて、握った。

好きなの…、尚人。

ねぇ?気づいて…。

その気持ちに気づいてくれたのかな―

尚人が私の手を握り返した。

なんでだろうか…。

私の頬を冷たい涙が伝った。

『どうした?』

尚人が打った、携帯画面に写る文字。

滲んでる。

歪んで見える。

親指で私の涙を拭き取る尚人。

その手がすごく温かくて…、涙が溢れ出す。

「尚人…、好き。」

なんなんだろうね…。

とっさに呟いていた。

涙でぐしゃぐしゃの顔で。

驚いた顔してるだろうな…、尚人。

でも、自分の気持ちを止めらんないよ―

「好き…。好きなの、尚人…。」

不安でもあったし、怖かった。

でも…、これが私の全てだから―

これが私の世界の限界だったから…。
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