「さよなら」も言わずに。
その時、フワッと温かいものに包まれた。

感じられるのは、尚人の体温。

温かい、温かい、尚人の体温だ。

尚人の顔を見ようと、顔を少し上げる。

…すると、尚人の顔が近づいてきて

私の唇と尚人の唇が重なった。

恥かしい思い。

そして、温かい気持ち。

それが答えなのだと、信じていいのか、分からないままの私。

少し落ち着くと、尚人が携帯を差し出してきた。

『早く言えよ!
すっげぇ待ちくたびれたし(笑)』

「え…?」

『俺も好きだってこと!
もともと、雷霧目当てで一緒に帰ってたし。』

顔が火照っていく。

好き…。

大好き…。

繋ぎなおした手。

指と指か絡んで、胸の奥のほうが熱くなる。

でも、確かに感じられる

尚人の温かさや、優しさ。

私の胸の奥をくすぐった。
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