「さよなら」も言わずに。
尚人が携帯で文字を打ち、女の子に見せる。

女の子はしばらくしてから、

「あぁ…、彼女。」

と呟いた。

すごい剣幕で私を一瞬睨み、

女の子は

「お邪魔しましたぁ。」

と部屋を出て行った。

「…妹?」

『あぁ、うん。妹の香奈[カナ]』

「へぇ…、香奈ちゃんか。
何歳なの?私と一緒???」

私と一緒ぐらいに見えた。

『今、12。
小6だよ、あいつ。』

「えぇ!本当に?
うわぁ。すごぉ!!!」

だって、中学生だったもん。見た目。

すごく大人びてた。

『中身、子供だから。
あんなんウザイだけだって。マジ』

お兄ちゃんとかって、そんなもんなのかな…?

私にもお兄ちゃんが居るんだけど、

私のことをいつもウザがってるもん。

高2のお兄ちゃんは、あんまり家に帰ってこないのだけど…。

「そうなんだぁ。」

一瞬頭を過ぎ去った。

香奈ちゃんの、私を睨む顔。

嫌われちゃったのかな…?

少し不安になる。

でも…

尚人の手の温もりが、そんな不安を消し去ってくれた。
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