「さよなら」も言わずに。
―パタンッ―

「はい」っと、尚人が私に携帯を返す。

尚人の手の温もりがまだ残っている携帯を

ギュッを握り締める。

咄嗟に尚人が愛に送ったメール内容が

気になって、携帯を開く。

メールBOXの送信履歴の1番上。

『坂木だけど…。
雷霧のこと悪く言ってんじゃねぇよ。
人のこと悪く言う奴ありえねぇから!』

優しくて、温かい尚人が…

強い言葉を愛にぶつけてる。

それが何だか、すごいことに思えてきて―

珍しいものでも見たかのように思えた。

―パタンッ―

携帯を閉じて、尚人を見上げる。

すると、チラッと白い歯が除いて

笑って私を見る尚人が居た。

「尚人、ありがと。」

ギュッと手を握った。

温かい…

尚人の優しさ。

すごく温かかった。

ふと、時計と見るともう6時をまわってた。

『お前、腹減らない?』

「んー…、ちょっと減ったかも。」

小さい音で、お腹が鳴ってるのが分かる。

『一緒にコンビニ行こっか。』

“一緒に”

胸がときめいた。

「うん!!!」

テレビを切って、2人で家を出る。

何だか温かい気持ちに包まれた。
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