「さよなら」も言わずに。
『お前も風呂入って来いよ。』

携帯画面。

障害無かったら、尚人の声聞けたのに。

胸がすごく苦しくなって…

荷物を持って尚人の家を飛び出た。

無理だった。あの空気の中に居ることが、窮屈だった。

さっき行ったローソンに入ってた。

弘人が「あれ?」って顔で私を見ているのが分かる。

雑誌のコーナーでボーッと雑誌を眺めていると

弘人が隣に来た。

「どうしたん?何かあったなら話聞くけど。」

涙目になっていくのがよく分かった。

「俺、もうすぐ上がるから
あと5分待ってろ。」

ボヤケテ視界が見えない。

目に飛び込んでくる、雑誌の表紙が

全て歪んで見える。

ボーッと突っ立っていると、

腕を掴まれ、

「雷霧、行くぞ!」

ってローソンを弘人と出た。

「とりあえず、俺ん家来い。」

言われるがままに、尚人について行く。

弘人の家って案外近くて、ローソンを出て信号を渡って

すぐのマンションの1階。

独り暮らしだとは聞いていたんだけど、

高校生で2LDKだとは思わなかった。

意外と片付けられている部屋の中。

散らかってるおにいちゃんの部屋とは大違い。
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