先生×生徒 ~沢山の壁を乗り越えて~
今、俺は嫁のアパートの前にいる。一呼吸置いて部屋に入った。
「久しぶりだね」
そう言われて
「あぁ」
と返した俺。
リビングに向かい合って座った。
「今日は話をしにきた。率直に言うと、俺と離婚してほしい。本当にすまないと思う。お前を幸せに出来なかった事、新婚なのに一緒に暮らすとか当たり前の新婚生活をしてやれなかった事、すまなかった。お前には俺より幸せにしてくれる男を見つけて欲しい。お互い別々の道を歩んで幸せになろう。」
「真悟、ごめんね。今日、真悟が家にくるって言ってた時からなんとなく気付いてたんだ。自分勝手な私を相手にしてくれてありがとう。真悟も幸せにしてくれる相手、見つけてね。真悟を好きになった事、後悔しないから。」
俺は泣きそうだった。頑張って堪えて、
「俺はサインした。お前もしてくれるか?」
そう言った。
静かに頷いた嫁は離婚届にサインをしてくれた。
それが終わってから、離婚届の片隅に結婚指輪を置いた。嫁も置いた。
「俺達が初めて出会った園川中学校の裏にある川に流しに行かないか!?」
嫁は笑顔で頷いて、指輪を流しに行った。
俺達は園川中学校に教育実習に行った時に出会った。その裏に流れている川に指輪を流して、橋の上で最後に抱き締めた。