愛の道は生きる道
「お疲れ様でした。ありがとうございました」

堀田先輩のアシスタントは、他の先輩より気を使う。
単に堀田先輩が厳しいからなんだけど。

「今池さん」
「はいっ」

「あなた、今度、一人でブライダルに入るんですってね」
「はい」

堀田先輩と話をするときは、いつも直立不動。
いつになく、後輩と話をするときは厳しい口調だ。

「まだ、周りが見えてない。自分のことで精一杯だと、周りがみえないから、とにかく余裕を持って、周りを見なさい。特に、ブライダルは相手が一般のお客様だから。撮影の仕事のようにはいかないわよ」
「はい!」


「じゃ、金山ちゃんの仕事、がんばって」
「はい。ありがとうございます」


いつもとかわらない厳しい口調の中にも、わたしは堀田先輩の愛を感じた。

わたしのこと気にかけてくれてたんだ。

絶対無視されていると思ってたのに。


丸山スタジオに向かうわたしの足取りは、とても軽かった。


< 171 / 247 >

この作品をシェア

pagetop