正反対恋愛【完結】
「何してたか言えよ?」


銀の声はいつも異常に低くて。


その声には怒りが込められていた。


「いや……無理矢理とかじゃなくて……この子に誘われて……」


斎藤君は何とかこの場を切り抜けようとありえない言い訳をした。



誘う訳ないよ。


あたしが斉藤君を誘う訳ない。


「……別に無理矢理しようとしたわけじゃ……」


やましい気持ちがあるからか、銀の血走った目を見る事が出来ず、斉藤君は床に視線を移したまま弱々しい口調でそう言った。



「佐奈はそんな軽い女じゃねぇんだよ」


銀はあたしに確認を取ることなく、斉藤君の右頬を思いっきり殴り付けた。


その瞬間、斎藤君は痛みに顔を歪め懇願した。



「俺が悪かったから……許してくれ……頼む!」


「それなら佐奈に謝れ」


「……ごめん…なさい………」


斉藤君は必死であたしに頭を下げ謝る。



「もう……いいよ」


怖かったけど、銀がいてくれたから大事には至らなかった。


「だとよ」


最後に背中を蹴り上げられた斉藤君は、そのままプリントを握りしめ逃げるように化学室を飛び出した。



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