我が家へようこそ(戦後編)
父の帰宅。
自分が3歳の頃、父は神風特攻隊として太平洋に散った。自分の名前を書いた、日の丸のタオルを手渡した。それが、最後のお別れだった。
戦後62年、父の遺品は何もない。写真さえもない。銭湯で、父の広い背中を洗った、かすかな遠い思い出だけしかない。
そんなある日、行政書士の男性が、我が家を訪れた。依頼人は、アメリカ人。長年にわたって、自分を探していたようだ。
東京のホテルで、そのアメリカ人と対面した。90歳になる老人だ。右足を引きずっている。
父が、ゼロ戦で駆逐艦に特攻したとき、甲板にいた彼は、海に飛び込んで一命を救われた。
その時だった。海中に落ちた、薄汚れた白いタオルを見つけた。そのタオルで老人は、負傷した右足を縛ったようだ。
それは、自分が父に上げたタオルだった。自分の氏名が、書かれてある。今まで、その老人は保管していたようだ。
そして、このタオルの持ち主を探し当てた。自分は、このタオルを受け取った。父の、唯一の形見だ。
そのタオルを持って、自分は帰宅した。家の玄関を開けて、入った。
「お父さん、お帰りなさい」。
終わり。
戦後62年、父の遺品は何もない。写真さえもない。銭湯で、父の広い背中を洗った、かすかな遠い思い出だけしかない。
そんなある日、行政書士の男性が、我が家を訪れた。依頼人は、アメリカ人。長年にわたって、自分を探していたようだ。
東京のホテルで、そのアメリカ人と対面した。90歳になる老人だ。右足を引きずっている。
父が、ゼロ戦で駆逐艦に特攻したとき、甲板にいた彼は、海に飛び込んで一命を救われた。
その時だった。海中に落ちた、薄汚れた白いタオルを見つけた。そのタオルで老人は、負傷した右足を縛ったようだ。
それは、自分が父に上げたタオルだった。自分の氏名が、書かれてある。今まで、その老人は保管していたようだ。
そして、このタオルの持ち主を探し当てた。自分は、このタオルを受け取った。父の、唯一の形見だ。
そのタオルを持って、自分は帰宅した。家の玄関を開けて、入った。
「お父さん、お帰りなさい」。
終わり。