愛ノアイサツ
「城田様、城田様、受付までお越しください。」
ざわざわとうるさい中、アナウンスで呼ばれた。あまり名前を名字で呼ばれるのは好きじゃないから二回も呼ばないでほしい。
「こちらお薬です。それと・・・。」
受付の女性が顔を真っ赤にして小声で言った。
「ヴァイオリニストの城田稜さんですよね!?私ファンなんです!明後日のコンサート頑張ってください。」
「ありがとうございます。」
適当に愛想のよさそうな顔で言えば大抵の人間はこうやって更に顔を赤くして俯いてしまう。そこそこ顔が整っていてこの若さならこんな女性のファンが多く付いてくる。願っていたわけではないが役得ではある。だが、常にこんな風に話しかけられるとさすがに鬱陶しくなる。
会計も済ませさっさと出ようとした時
中庭に目が奪われその場に立ち止まってしまった。
体中の血液が一気にめぐり始め微かに指が震えている。
中庭の小さなベンチに一人の女性がかけていた。淡いグリーンの病衣を着てさらさらと流れるような黒髪が微かになびいている。こちらからではよく見えないが何か音楽を聴いているようだ。
「・・・・・。」
この光景を僕は知っている
それはいつの間にかどこかに忘れてきてしまった
宝物だったんだ
ざわざわとうるさい中、アナウンスで呼ばれた。あまり名前を名字で呼ばれるのは好きじゃないから二回も呼ばないでほしい。
「こちらお薬です。それと・・・。」
受付の女性が顔を真っ赤にして小声で言った。
「ヴァイオリニストの城田稜さんですよね!?私ファンなんです!明後日のコンサート頑張ってください。」
「ありがとうございます。」
適当に愛想のよさそうな顔で言えば大抵の人間はこうやって更に顔を赤くして俯いてしまう。そこそこ顔が整っていてこの若さならこんな女性のファンが多く付いてくる。願っていたわけではないが役得ではある。だが、常にこんな風に話しかけられるとさすがに鬱陶しくなる。
会計も済ませさっさと出ようとした時
中庭に目が奪われその場に立ち止まってしまった。
体中の血液が一気にめぐり始め微かに指が震えている。
中庭の小さなベンチに一人の女性がかけていた。淡いグリーンの病衣を着てさらさらと流れるような黒髪が微かになびいている。こちらからではよく見えないが何か音楽を聴いているようだ。
「・・・・・。」
この光景を僕は知っている
それはいつの間にかどこかに忘れてきてしまった
宝物だったんだ