愛ノアイサツ
「雪乃ちゃん、お薬はもう飲んだの?」
真っ白な部屋に看護師の声が響いた。
「飲んだよ。」
「明日は検査の日だから、今日は早く寝ようね。」
「うん。」

今週に入ってもう2回目の検査だった。前日の夜は何も食べられないし部屋からさへ出してもらえないから、結局ほとんど誰とも話さずに日が暮れる。最近看護師さんが買ってきてくれた本ももう読み終わってしまった。でも何も考えずに時間をつぶすことは得意だから、そんなに辛くはない。ただそうやって時間をすごしているとき、ふと窓の外を見ると元気に友達と走りながら家に帰る同い年くらいの子がすごくうらやましかったりする。そして、私だけどんどんおいていかれているようで不安になる。この広くて清潔な空間から一日でもいいから抜け出したかった。

「あれ・・・?」
いつものように窓の外をぼんやりと眺めていたら芝生が植えられた病院の裏庭のベンチに一人の男の子が真剣そうに大きな紙を見ながら座っていた。
「初めて見る子だ。パジャマだから入院してる子なのかな?」
日が暮れてその子があわてて病院に入っていく姿までずっと眺めていた。


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