愛ノアイサツ
次の日もその子は裏庭のベンチで大きな紙を眺めていた。よく見てみると耳から長い紐が延びていて小さな四角い箱につながっている。あれは何だろう?次の日も、そのまた次の日も、その子はいつもそのベンチに座って大きな紙を見ていた。
この日の私は少し違った。あの子があんなに必死になって見ているものは何だろう?気になって昨日の夜はなかなか眠れなかった。だから今日は勇気を出してあの子に話しかけてみようと思った。
看護師の許可をもらって裏庭に出た。小春日和の日の光がまぶしい。そしてその光の中にいつものベンチに座ってあの男の子がやっぱり真剣そうな顔で大きな紙を見ていた。
私がそのベンチに向かって歩き始めようとしたら、軽く吹いた風に男の子の横に重ねられた紙がふわりと飛んでしまった。男の子はそれに気づくこともなく大きな紙を見ている。さらに風に煽られて飛んでいく大きな紙を私はあわてて拾い上げて男の子のもとに駆けた。
「あのぅ・・・」
息が上がって擦れた声しか出ない。おまけに男の子はやっぱり気づかない。震える手でトンっと男の子の肩をたたいた。
ガバっと驚いたように男の子が顔を上げた。大きな栗色の瞳と視線が交じる。それは一瞬だったはずだけど、私にはそれがうそなんじゃないかと思えるほどその記憶が鮮明に残った。
この日の私は少し違った。あの子があんなに必死になって見ているものは何だろう?気になって昨日の夜はなかなか眠れなかった。だから今日は勇気を出してあの子に話しかけてみようと思った。
看護師の許可をもらって裏庭に出た。小春日和の日の光がまぶしい。そしてその光の中にいつものベンチに座ってあの男の子がやっぱり真剣そうな顔で大きな紙を見ていた。
私がそのベンチに向かって歩き始めようとしたら、軽く吹いた風に男の子の横に重ねられた紙がふわりと飛んでしまった。男の子はそれに気づくこともなく大きな紙を見ている。さらに風に煽られて飛んでいく大きな紙を私はあわてて拾い上げて男の子のもとに駆けた。
「あのぅ・・・」
息が上がって擦れた声しか出ない。おまけに男の子はやっぱり気づかない。震える手でトンっと男の子の肩をたたいた。
ガバっと驚いたように男の子が顔を上げた。大きな栗色の瞳と視線が交じる。それは一瞬だったはずだけど、私にはそれがうそなんじゃないかと思えるほどその記憶が鮮明に残った。