愛ノアイサツ
「もう帰るの?」
ベッドの中からモゾモゾと顔を出す女を一瞥して脱ぎ捨てた服を着た。
体が重く気分も悪い。昨晩飲んだ酒がキリキリと腹をつついた。
「ねぇ稜?今度はいつ会ってくれる?」
甘ったるい声を出す女を無視し、僕は外に出た。腕の臭いを嗅いで甘ったるくきつい香水の香りに顔をしかめた。
ホテルから出ると鉛色の空がまるでだらりと堕ちてきそうな天気だった。湿った空気が雨を予感させる。停めておいた自分の車のロックを解除してドアを閉めた。
プルルルル-----------
突然ポケットで鳴った携帯を取り出して、ディスプレイに映る文字に更に気分が悪くなる。仕方なしに通話ボタンを押してそれにでた。
「はい。」
『おい!今まで何処にいたんだ!?散々電話かけたんだぞ!』
「気づきませんでした。すみません。」
『ったく……明後日はお前の初ソロコンサートなんだぞ!少しは自覚しろ。』
「分かってます。今急いでるので、リハには間に合わせますから。」
それ以上はなにも聞かずに電話を切った。乱暴にポケットにつっこみ、キーを回してエンジンをかける。無意識に煙草をくわえて火をつけた。
九州の地元から上京して二年目。大学を出てすぐに日本フィルに就職し、次の年にはヴァイオリンの才能を買われてソロとして活動を始めた。今年に入り自分のソロコンサートを持つまでになって、音楽家としても成功しいよいよ仕事も軌道に乗ってきた。そんな僕のことを周りの知り合いや大学時代の友人はうらやましがるが、当の本人はありがたみも何も感じない。仕事だから、これしかないから、そんな気持ちだった。淡々と弦を弾き、それでも周りは認めてくれたからそれならそれでいいかと、朝起きて練習して適当に近づいてきた女と寝て、そんな毎日をおくっていた。
ベッドの中からモゾモゾと顔を出す女を一瞥して脱ぎ捨てた服を着た。
体が重く気分も悪い。昨晩飲んだ酒がキリキリと腹をつついた。
「ねぇ稜?今度はいつ会ってくれる?」
甘ったるい声を出す女を無視し、僕は外に出た。腕の臭いを嗅いで甘ったるくきつい香水の香りに顔をしかめた。
ホテルから出ると鉛色の空がまるでだらりと堕ちてきそうな天気だった。湿った空気が雨を予感させる。停めておいた自分の車のロックを解除してドアを閉めた。
プルルルル-----------
突然ポケットで鳴った携帯を取り出して、ディスプレイに映る文字に更に気分が悪くなる。仕方なしに通話ボタンを押してそれにでた。
「はい。」
『おい!今まで何処にいたんだ!?散々電話かけたんだぞ!』
「気づきませんでした。すみません。」
『ったく……明後日はお前の初ソロコンサートなんだぞ!少しは自覚しろ。』
「分かってます。今急いでるので、リハには間に合わせますから。」
それ以上はなにも聞かずに電話を切った。乱暴にポケットにつっこみ、キーを回してエンジンをかける。無意識に煙草をくわえて火をつけた。
九州の地元から上京して二年目。大学を出てすぐに日本フィルに就職し、次の年にはヴァイオリンの才能を買われてソロとして活動を始めた。今年に入り自分のソロコンサートを持つまでになって、音楽家としても成功しいよいよ仕事も軌道に乗ってきた。そんな僕のことを周りの知り合いや大学時代の友人はうらやましがるが、当の本人はありがたみも何も感じない。仕事だから、これしかないから、そんな気持ちだった。淡々と弦を弾き、それでも周りは認めてくれたからそれならそれでいいかと、朝起きて練習して適当に近づいてきた女と寝て、そんな毎日をおくっていた。