続きは、社長室で。2
その瞬間にふわりと鼻腔を掠めていく、甘いホワイトムスクの香り。
トクン、トクンと一定のリズムを奏でる心音が、さらなる安らぎを齎してくれる…。
「どうした?」
そんな私を広い胸で受け止めてくれると、ポンポンと頭を優しく撫でてくれた。
「ううん…、会えて嬉しい…」
「フッ…、俺も…」
「っ・・・」
心地よい清涼な声色に抱かれつつ、眼前の貴方だけに神経は集中していて。
1人で勝手に抱いていた胸の痞えも、情けない嫉妬心も払い去ってくれる…。
アノ日からモヤモヤに押し潰されそうで、見えない何かが怖くて堪らなくて。
いつまでも不安で臆病な自分が、イヤでイヤで仕方がなかった。
素直にキモチを伝えるだけ…、たったソレだけのコトなのに。
その一言を発するのが難しいなんて、私は本当に弱虫だね…――
「そろそろ行こうか?」
「え…、どこに?」
抱きついて暫く経ってから、遥か頭上より清涼な声で尋ねられた。
キョリを置いて、見上げるように薄明かりの中でブラウンの瞳を探せば。
「今日は覚悟してろよ…」
「ッ――」
熱を帯びた扇情的な眼差しで、私をジッと見据える貴方に囚われた…。