続きは、社長室で。2


呼吸さえ忘れそうなほど、貴方の瞳にすっかり魅入っていれば。



「行こうか?」


「うん…」


しなやかな指でキュッと絡め取られると、そのまま歩を進めていく私たち。




闇夜の中を東条家のガレージへと向かい、今日はアウディ車へと乗り込んだ。



バラード曲が流れる車内で、曲調と同じくして会話を重ねているというのに。



その優しいトキとは裏腹に、バクバクと忙しなく囃し立てる心音が煩かった。



先ほど投げ掛けられた視線が内心を煽り立て、ボッと炎を灯したから。



ううん…、会えたトキには始まっていたのかもしれナイ・・・





「東条社長、お帰りなさいませ」


「遅くなりまして、申し訳ないです」


深々と一礼をされた拓海は、此処でも丁寧な挨拶を忘れない。



「とんでもないことでございます。

どうぞ、ごゆっくりお寛ぎ下さいませ」


「ありがとうございます」


到着したホテルは東条グループ系列であり、以前とは別の5つ星ホテル。



真夜中だというのに恭しく出迎えられて、私も拓海と一緒に深々と一礼した。



いつ時であろうとも、東条というネームバリューは忘れてはならないのだ。




< 102 / 226 >

この作品をシェア

pagetop