続きは、社長室で。2


泣きすぎてボーっとする脳内では、言葉の意味など理解出来るハズもなく。



現実から背くように固く閉じていた瞳を、ゆっくりと開いてみれば。



小さな頃から、ずっと憧れを抱いてきた理紗子さんと眼が合った――




「我が子に対して、可笑しい言い方かもしれないけれど…。

あの子はまだ、東条と蘭ちゃんの未来を背負い始めたばかりよ?

誰よりも貴方を愛しているから、だから拓海は大丈夫…――」




拓海を乗せた飛行機が消息を絶った事は、トップシークレットとなっていた。



東条家の子息が不明と知れ渡れば、世界を揺るがす事態になり得るため…。




“もしも”の事があるトキまで、秘密裏の捜索が行われているらしい・・・




もはや確固たる地位を築き上げている、東条というネームバリュー。



だけれど当該者には、何処までも栄華を誇るブランドがその身を苦しめる…。





「あの子を信じてくれるなら、笑って欲しいな…?」


そう話しながら、赤ちゃんをあやすように背中をポンポン叩いてくれて。



「っ――、は、い…」


「良かった…」



小さな手から温もりが伝わってきて、優しい力を分けて貰えたから…。



慌ててゴシゴシと涙を拭うと、凍りついている口元を歪ませながらも。



安堵する彼女の姿に、背負う物の重さを少し理解出来た気がした。




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