続きは、社長室で。2
今が喩えようもなく苦しくて…、悲しみに打ちひしがれたいのだとしても。
面前に見せる表情や態度ひとつで、世界の様相を変える事態に陥ってしまう。
だから彼女は、いつでもたおやかに笑い続けて、凛としていたのだ。
すなわち東条の人間は、自身の感情を表面に出してはダメだというコト。
そしてソレが拓海の隣で生きていくコトだとも、少し解ってきた…――
「私…、東条の人間と、して。
拓海を…、笑顔で待ち、ます…」
「全力で捜索にあたっているから、絶対に大丈夫よ…。
どんな時も笑顔で、拓海の帰りを待ちましょうね?」
「…っ、はい…――」
理沙子さんの澄んだ瞳をジッと捉えて、言葉足らずながらも本心を伝えられた。
「それなら…、まずはシャワーを浴びて来ましょうか。
その顔だと…、表へは出られないかな?」
「っ、す、すみません…」
苦笑する理沙子さんに一礼したあと、慌ててバスルームに直行した・・・
何処までも限りなく…、押し寄せては引いていく穏やかな波のように。
人もまた、いつまでも同じトコロで留まってイラレナイと思えたからこそ。
弱虫を脱却した矢先の荒波は、新たな私への変遷期となる気がした…。
たとえ貴方を信じ続け、待ち侘びるコトしか出来ないとしても。
ずっと拓海からの愛証を頼りに、無事を祈り続けているから…――