続きは、社長室で。2


今が喩えようもなく苦しくて…、悲しみに打ちひしがれたいのだとしても。



面前に見せる表情や態度ひとつで、世界の様相を変える事態に陥ってしまう。



だから彼女は、いつでもたおやかに笑い続けて、凛としていたのだ。



すなわち東条の人間は、自身の感情を表面に出してはダメだというコト。



そしてソレが拓海の隣で生きていくコトだとも、少し解ってきた…――




「私…、東条の人間と、して。

拓海を…、笑顔で待ち、ます…」


「全力で捜索にあたっているから、絶対に大丈夫よ…。

どんな時も笑顔で、拓海の帰りを待ちましょうね?」


「…っ、はい…――」


理沙子さんの澄んだ瞳をジッと捉えて、言葉足らずながらも本心を伝えられた。




「それなら…、まずはシャワーを浴びて来ましょうか。

その顔だと…、表へは出られないかな?」


「っ、す、すみません…」


苦笑する理沙子さんに一礼したあと、慌ててバスルームに直行した・・・




何処までも限りなく…、押し寄せては引いていく穏やかな波のように。



人もまた、いつまでも同じトコロで留まってイラレナイと思えたからこそ。



弱虫を脱却した矢先の荒波は、新たな私への変遷期となる気がした…。




たとえ貴方を信じ続け、待ち侘びるコトしか出来ないとしても。



ずっと拓海からの愛証を頼りに、無事を祈り続けているから…――




< 119 / 226 >

この作品をシェア

pagetop