続きは、社長室で。2
岐路の、始まり。
試練は乗り越えられる者にしか与えないと、誰かに聞いたコトがある。
一山を乗り越えた私はこの先、どんな凸凹道でも進めると思っていて。
貫き通した信念があれば大丈夫だと、そう自信を漲らせていた・・・
「蘭…、準備出来た?」
「あ、うん・・・」
ガチャッ――
バスルームのドアを開けると、腕を組み構える拓海の姿を捉えた。
「ご、ごめんね…」
「いや、行こうか?」
「うん・・・」
以前の冷たさは無く、誘われるような口調で嬉しさが募っていく。
些細すぎる変化を発見する度、もっと強くなれそうな気がしたの…。
「社長、いってらっしゃいませ」
「ありがとうございます」
ロビーに集結していた従業員に、恭しい挨拶で見送られた私たち。
此処では既に社長としての仮面を纏い、丁寧に返している拓海。
あれから一夜を過ごしたのは、グループ傘下にある三ツ星ホテルの一室で。
そうしてホテルをあとにすると、用意されていた車へと乗り込んだ。