続きは、社長室で。2



だから…、帰って来たトキは、何よりもまず先に抱き締めてね・・・




理紗子さんの助言でバスルームに入室した私は、大きな鏡へと眼を向けた。




「ヒドイ顔・・・」


ムリヤリ自嘲した笑みを浮かべて、“今の自身”を客観的に捉えてみれば。



鏡と向き合う姿は、泣きすぎてグシャグシャの情けない顔つきをしていて。




こんな最低な表情…、貴方に対して申し訳ないのに・・・



苦しみをグッと堪えてアクセサリーを外すと、ドレスのファスナーに手を掛けた。



涙のシミが無数に散らばっていた、大切な真っ白のドレスを脱いでいく。



貴方を想いながら泣かせて貰えた分、もう泣かないと誓いながら…。





すっかり冷たくなった雫の残る浴室に入ると、すぐにシャワーに手を掛けた。



ザーザーと勢い良く流れ出る水流は、恐怖で強張る身体を打ちつけていく…。




それはまさに、苦しい現実からは逃れられナイと突きつけているようで。



冷え切った心のせいか、シャワーを浴びながらも身体は一向に温まる気配がない。



それでも秘密の部屋のように“泣ける空間”でも、決して涙だけは流れなかった。




紅い花弁の如く無数に広がる愛証が、苦しさと平常心の均衡を保っている中で。



愛しい貴方に会えるまで、涙を封印出来ると唱えていたから・・・




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