続きは、社長室で。2


今日の車はメタリックブラック色の、ランボルギーニ。


誰もが憧れるこの車は、世界に十数台しかないらしい・・・




「この車、実は…」

正面を見据えたまま、口元を少し緩めて話し始めた拓海。




ポーカーフェイスが幾分崩れた横顔に、内心ではドキッとしたけれど。



心地良い清涼な声から、特別な日にお目見えする車だと知れた。



私がこの独特なエンジン音を聞いたのも、これが2度目だったのだ。




地面を這うように走行する、独創的なフォルムをしたランボルギーニ。



響かせる轟音は卒がなくて、どこか拓海の性質に似た車に思えてしまう。




以前は狭い空間にいても、沈黙か必要最低限の会話だったというのに。



拓海が“特別な日”と位置づけてくれたコトで、また幸せを呼び込んでいた。




知らないコト、知らないトキ、知らないキモチ――



これからも節々で発せられるモノを、大切に拾い集めていきたい。



今までポッカリと空いていたトキは、埋めていけば良いの…。




暢気に考えていた私は既に、幸せボケをしていたのね・・・




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